Behind the scene / 開発秘話

中空フロッグの元祖「スナッグプルーフ」社と共同開発したエクストリームフロッグの開発秘話をお伝えします。

1)ハンドメイド・オリジナルフロッグ作り

今から20年以上遡ること2001年、オリジナルフロッグを作ろうと考え、雷魚釣り仲間と一緒に制作を試みました。

先ずはボディ形状を決めるため、紙粘土でベースとなるボディを何種類か作り、その中から良さそうなデザインをセレクトし、それを石膏で型取りし、シリコーンを流し込んで中空ボディを作りました。また、ホワイトだけではなく染料を使って黒/白、ピンク/白のマーブルカラーまで作ってみました。

実はボディを作る際に、フックが大きな問題になりました。フック形状に合わせてボディを作りませんと、市販のフックとのバランスが合わなくなります。

フックもオリジナルで制作するつもりでいましたが、ボディが決まらないとフックは作れず、また、フックが無ければボディを作ってもテストができないというジレンマに陥りました。

フックが先かボディが先かという問題に突き当たり、先ずはボディデザインを決めることを優先し、市販フックを調整して使っていくことにしました。アイはステンレスのバネ線を加工して使いました。

上の写真のフロッグは全てハンドメイドの中空フロッグで、ボディ形状は小型~中型、細長いモノから丸いものまで多数制作しました。

 

3シーズン、この自作フロッグをフィールドで使い、自分たちのデザインしたフロッグの性能評価はもちろん、ボディサイズ、形状など数多くのサンプルを作って主に野池を中心として東北から九州まで全国のフィールドでテストを繰り返しました。

しかし、このオリジナルのフロッグには大きな欠点がありました。それはボディのシリコーン素材です。

塩化ビニールの素材では自作が極めて困難である(多数のサンプルを作ることができない、製造技術が無い)ことはこの企画を始める前から分かっていましたが、ハンドリングが容易なシリコーンは柔らかすぎて、塩ビボディと同様の皮の厚みではカバーに直ぐに引っ掛かり、特に、キャスト後の着水でカバーに絡みました。

解決策として、皮の厚みを増やし、フックポイントを背中に隠すなどの調整が必要になりました。様々なカバーエリアでテストを繰り返しましたが、フックポイントに細かなゴミや藻が絡むトラブルが多発し、今から思えば数多くの絶好のチャンスを逃す結果になってしまいました。

そのあたりは、塩ビ素材で量産する際に調整すれば済むのではないかと楽観視していましたが、上記のとおり、ボディが柔らか過ぎでカバーでは使い難く、また、塩ビ素材に比べてフロッグ自体の浮力も低く、アクションにも影響が出ていたため、本当の意味での性能評価になっていませんでした。

つまり、ボディデザインは好きなように作れたとしても、実際に雷魚釣りに使ってフィールドテストが思い通りにできないことが明確になりました。3シーズンを通して様々なテストを繰り返し、多数の雷魚を釣ることはできましたが、モンスターは獲れず、上記のとおりテストが思うように進められないことも明確になり、このシリコーン素材でのオリジナルフロッグ制作は中止することにしました。

2)スナッグプルーフ社とのプロ契約

ハンドメイドオリジナルフロッグ作りをしている時を同じくして、スナッグプルーのフロッグを愛用し、ウェブサイトでPRするなどアメリカのスナッグプルーフ社との交流を重ねていました。そんな折、スナッグプルーフ社から雷魚釣りアングラーとして契約プロにならないかというオファーをいただき、2004年から日本人として初めてスナッグプルーフ社の契約プロとなりました。

それにより、スナッグプルーフ社との繋がりが強くなり、様々な意見交換を行うことになり、上記の通りハンドメイドオリジナルフロッグ作りが暗礁に乗り上げていたため、スナッグプルーフ社とオリジナルのフロッグ作りについて協議をしてみようと考えました。

 

1985年に創業者のハリーさんが他界した後、長男のハリー・エラーズJrさん(写真左側)がフロッグのデザインから生産まで担当しており、販売とマーケティングを妹のコニーさん(写真右側)が担当していました。そのハリーさんとオリジナルのフロッグ製作について協議を開始しました。(上の画像は友人からいただいた1980年代と思われる雑誌に掲載されたお二人の写真です)

我々雷魚マンの間ではスナッグプルーフ・キャストフロッグ(オリジナルフロッグ)は大好きなフロッグの一つで、特に1980年代はこのキャストフロッグの足を切ってウェイトアップして使うのが定番中の定番でした。そして、時代が進んだ1990年~2000年代初頭は進化した雷魚タックルを使ったヘビーカバーゲームが主流となっており、このフロッグの形状のまま、大きいサイズで足が最初から付いていないモデルがあれば良いのにと強く思っていました。

ということで、このキャストフロッグを20%大きくし、ウィップラッシュファクトリーさんのZODと同じ使い方できるフロッグを共同開発しようということでハリーさんと合意をしました。

3)エクストリームフロッグの誕生

2007年の秋、ボディサイズや細かな仕様の打ち合わせ、生産する際の条件交渉を経て、ようやくエクストリームフロッグの原型となるサンプルが日本に届きました。

 

シリコーン素材ボディで試作を繰り返していた頃と同様に、フックが無い状態でのサンプル制作となりましたが、フック形状がある程度決まっていませんと、ボディデザインができないことから、スナッグプルーフ社の他モデル(ブリーディングフロッグなど)で使用していたUSオーナー製のダブルフックをテンポラリーに使うことにしました。

見る方が見れば分かりますが、オハイオ工場で創業者一族のハリーさんが作ったボディはクオリティが最高でした。柔らかさと張りのバランス、強度(日本製フロッグよりも薄くて丈夫)、独特な色使いなど、我々フロッグ偏愛者には垂涎のフロッグです。

 

ウェイトの位置やサイズはハリーさんの推奨する、キャストフロッグと全く同じにしました。

こちらとしては環境性能も重視したいため、本番の量産時にはタングステンウェイトに切り替える予定になっていましたが、初期サンプルは鉛のウェイトとなりました。

この初期サンプルに使った赤色フックがヒントになり、その後の本番生産でもエクストリームフロッグのフックは赤色を踏襲することになりました。

 

 この日受け取ったサンプルを雷魚釣りの友人に配布し、フィールドテストを行いました。フックは好みに応じて取り替えたり、ウェイトも追加、位置変更などユーザーの好みに応じてチューニングしてもらいました。

下の画像の黒いエクストリームフロッグは、日本で雷魚を釣った第一号です。晩秋の九州クリークでそのパフォーマンスを確認しました。サイズはキャストフロッグよりも20%大きいのですが、フッキング性能はキャストフロッグ同様に極めて高いため、クリークの小型雷魚を多数キャッチしました。

日本の雷魚用フロッグは、その製造方法によりフックホールが大きく開くため、その穴を利用してフック自体に鉛の板オモリを巻き付けたり、差し込み型の鉛ウェイトを取り付ける方法が主流ですが、スナッグプルーフ社も我々も「フックにウェイトを載せる=噛シロが減ることによるフッキング率の低下とバレ易い」という考えの元、フロッグの後端にウェイトを取り付ける方法を推奨してきました。

また、環境への負荷を減らすため、有害な鉛製のウェイトを廃止し、タングステンやブラス(真鍮製)ウェイトを使うことも大きな特徴です。

 

こうして構想開始から9年後の2010年2月に市販モデルのエクストリームフロッグが日本に到着しました。

エクストリームフロッグは、キャストフロッグのコンセプトでデザインされており、キャストフロッグを熟知し、愛用されているベテラン雷魚マンの方はもちろん、面倒なチューニングをしなくても、簡単なシーリングとフック調整で使うことができるため、ビギナーの方にも超おススメのフロッグです。

ビギナーには使いやすく、ベテラン雷魚マンには奥深いチューニングを施せるフロッグです。